フジロック・フェスティバル'05初日 2005/07/29/Fri.

 昨年に引き続きフジロックに参戦。普通に書いていくと絶対に長くなるので、今回はできる限り簡単に書くことにしたい。さて、初日で強烈な印象を残したのは、バンダ・バソッティ、ザ・ポーグス、コールドプレイの3バンドだ。
 
 僕がフジロックに行き始めたのは昨年からだが、過去のフジロックにおいて見られなくて悔しい思いをしていたバンドやミュージシャンが実は4つあった。マヌー・チャオ、ビョークシンク・オブ・ワン(昨年のシンク・オブ・ワンは公演時間の変更に気づかず見逃すという大失敗を仕出かした)、そしてバンダ・バソッティだ。
 そのため初日でもっとも楽しみだったのが、このバンダ・バソッティだった。イタリアのスカ・パンクバンド、バンダ・バソッティはスカのリズムに合わせて力強く抵抗歌を歌ってみせる。メンバーたちは普段は外見通りの紛うことなき労働者たちであり、集会などでの演奏を中心に活動している。しかも、イタリアでは軽く1万人集客できるほどの人気なのだとか。
 今回演奏を生で聴いて、やはり期待を裏切らない見事な出来栄えに感動した。10人ほどのメンバーが奏でる強力なスカのリズム、疾走するブラス、力のこもる歌。非常に充実した演奏だった。とにかく熱い、熱い、熱い。去年のジミー・イート・ワールドもそうだが、熱い音楽は雨にもよく合う。どしゃ降りのなか、おっさんたちが抵抗ののろしを上げる。
 
 アイリッシュ・パンクの元祖、ザ・ポーグスは、脱退していたボーカルのシェイン・マガウアンも含んでの伝説的な来日と言っていい。実際の演奏について言えば、実のところフジ初日の各公演の中でも衝撃度ではこのポーグスが一番だった。ただし、必ずしも音楽的な衝撃ではない(笑)。要するに、酔いどれシンガー、シェイン・マガウアンだ。
 彼は正真正銘マジでモノホンの酔いどれだ。片手にマイクを持ちつつも、もう片方の手には酒を放さない。さすがにポーグスのメンバーたちもシェインはやばいと分かっているのか、一曲ごとにシェインを交代させ、彼に連続で歌わせないようにしている。
 ある歌の際には至っては、合間にトイレに行っていたのか、なんとズボンのチャックを上にあげながら舞台に登場してきた…。しかも、酔っ払いの手付きが怪しく、なかなか上にチャックが挙がらないのだ。目つきもあやしく、体の動きも明らかに酔っ払いのそれだ。曲に合わせて腕を上に振り上げるときも、一拍は遅れている(笑)。
 酒で声が潰れているのはともかくとしても、言葉の呂律がぜんぜん回っていない。何を言っているのか、さっぱり分からない。というより、何語なのかさえ分からない。ただし、ノリノリではあるらしく、勢いあまって何度も動物のような奇声をあげていた。
 彼に比べれば、酔いどれ詩人トム・ウェイツなんて赤子のようなものだ。真の酔いどれは人間というより動物に近く、ロマンチックなイメージを期待してはいけない。繰り返して言うが、実際の酔っ払いにロマンチックなところは何もない。
 演奏そのものはまぁこんなものかという感じだが、観客はものすごくノリノリだった。だが、あれはシェインの姿を見ての、何でもありな雰囲気が大きかったのではないか。女の子を持ち上げてのダイブも行われていたし、僕の近くにいた白人はいきなり満員の観客内でナニを取り出し、立ちションかなにかを始めていた。ただし、この何でもありなカオティックな空間を無防備に賛美する気にはならない。なぜなら、肝心の演奏そのものがやや大味にすぎるのだ。演奏は破綻がなさすぎ、その割りにボーカルはシェインに限らず破綻気味。ただし、そうは言っても、もう一度ライブは見てみたいと思ってしまっているのだが…。
 
 新作が充実していたコールドプレイはなかなかの演奏を見せてくれた。実際、これほどロマンチックな歌をロマンチックなパフォーマンスでもって感動を与えられるバンドはほかにいないのではないか。特別な装飾などないシンプルな黒っぽいステージに登場したメンバーたちも黒の上下であるため、少し見づらいものの確かにお洒落な雰囲気ではある。
 演奏が始まるや否や3rdアルバムの1曲目「スクエア・ワン」、2ndアルバムの1曲目「ポリティーク」、1stの大ヒット曲「イエロー」と、いきなり必殺チューン連続で、会場は一気に盛り上がる。ただし、こうして並べて聴いてみると、ダンダンダンダン、ダンダンダンダンという盛り上げ方のパターン化が非常に気になるのも事実だ。
 もっとも感動的だったのは「ホワイト・シャドウ」「サイエンティスト」の部分ではないだろうか。自分が人類や自然などの一部であるという感覚について歌う前者は、最後の最後にクリスのボーカルが際立つとりわけ泣きのメロディが現れる。「溢れる人波のなかへと、押し寄せる人類の海へと泳ぎ出よう。答えがいますぐ必要なんだ。新たな日の出のなかにそれを見よう、そして君の地平線から突然それが姿を現すのを見よう。さぁおいで、愛しい人よ。僕のそばにいておくれ」。暗闇にキーボードがシンフォニックに響くなか、クリスは天を仰ぎ、何かを求めるかのように手を上に伸ばしながら歌い上げる。他の人がやっていたら物を投げつけているようなパフォーマンスだが、彼がやるとなかなかかっこいい。
 後者は忘れがたい小品であり、実のところこの手のものこそコールドプレイの真骨頂ではないかと思う。一言で言えば別れの歌なのだが、「ホワイト・シャドウ」のようにロマンティシズムをシンフォニックに盛り上げるのではなく、淡々としたピアノの弾き語りを中心にした静かな歌声によってロマンティシズムが織り成されていく。実際、クリスの声は静かな歌をゆっくりと歌ったほうが、微妙な声の揺らぎが次々と立ち現れて、豊かさが増す。
 
 初日はほかにスカ・クバーノ、スカ・フレイムス、プレフューズ73、ROVOを聴いた。プレフューズはいまいち。ツインドラムと言っても、例えばROVOのツインドラムと比較するとその違いはあまりにも大きい。