タラソテラピーの癒し

先日、諸事情により一泊でタラソテラピーを体験してきた。高価な買い物だが、日ごろの疲れがもしかして癒えるかもという淡い期待もあって蕩尽。などというのは嘘で、本当は分かっていたのだ。自分がそんなもので癒されたりしないということは。結局のところ、すべてがあまりにも"ぬるい"。タラソテラピー(海洋療法)とは、要するに「海水は体にいい」ということに尽きる。暖めた海水を使って、水に入って運動したり、ぷか〜っと浮いたり、水を掛けられたりする。「だったら海に入ればいいじゃん」などという野暮なことをいう人は行かないほうがいい。ほとんどが気持ちの持ちようなのだ。ここにはくカート・コバーンの叫びやトレント・レズナーの苦悩やトム・ヨークの絶望は存在しない。もちろんそんなものを求める人はタラソテラピーになど来ないだろうが(笑)、とにかくここには過剰さは皆無だ。
さて、今回、僕は4アイテムを受けてみた。最初のアイテムでは、長方形型の個室のなかに入り、壁に向かって立たせられる。そして、巨大なホースを持った女性のセラピストに、後ろから暖めた海水を浴びせかけられるのだ(笑)。体の後ろから横から前から、あちらこちらに水をぶっかけられる。気持ちいいと言えば気持ちいいのだが、まぁ結局は水遊び。あるいは倒錯的なソフトSM。確かに珍しい体験ではある(笑)。
次のアイテムでは、個室のなかで、寝転がってひたすら海水シャワーを浴びた。寝転がって暖かいシャワーを浴びるので気持ちいいと言えば気持ちいいのだが、それだけ。単に寝転がってシャワーを浴びることについて、これ以上何を言えばいいんだ。
次が海水プールでの軽い運動。これもプールのなかを歩き回ったり、飛び跳ねたりするだけなので、別に海水プールでなくても…というもの。
最後は海水から作られたマイナスイオン粒子(!?)が充満しているらしい暗い部屋の中に横たわり、リラックスするというアイテム。人を小ばかにしたようなニューエイジ系のたるい音楽(鳥の鳴き声なども入っている)が小音量で流されるなか、セラピストの声だけが耳に響くという新興宗教がかったセラピー。笑いをこらえるのに困った(笑)。最後にはなんと、「さて、皆さんの体のなかから少しずつ活力が漲ってきます」などと一方的に宣言されるのだ。その気になって活力が漲ってくる人には漲ってくるのかもしれない。だが、マイナスイオンのいかがわしさについては、いい加減みんな勉強しようよ。
ところで、タラソテラピーはフランスが発祥だが、シラク大統領や国民戦線の党首ルペン(!?)なども受けているのだとか。彼らのようになりたい人はぜひ。