浦沢直樹×手塚治虫『PLUTOプルートゥ』01(小学館)

浦沢直樹は『モンスター』終了間近の時期に、『20世紀少年』を同時に連載していた。あれほどの作品を2作同時に連載していく、その力技には舌を巻いたものだが、彼は現在、また『20世紀少年』と同時に別の連載もスタートさせている。これは『20世紀少年』のクライマックスが近いと言うことなのだろうか。確かに週刊誌上では大きな山場を迎えようとしており目が離せない…。だが、その話はまたの機会に。
同時連載として浦沢が選んだのは、何と手塚治虫鉄腕アトムだ。しかも、鉄腕アトムの「地上最大のロボット」を題材に、その作品の一脇役にすぎないドイツのロボット刑事ゲジヒトを主役に据えたものなのだ(ゲジヒトは原作では全180ページ中、たった7ページしか登場しないキャラクターだ)。
まだ第一巻しか読んでいないため、詳しい感想は追って書くことにしたいが、恐るべきはロボットが感情を持つことを、奇妙な違和を感じさせながら描き出しつつある点だ。
原作においては、ロボットが感情を持っていることには何の違和感も存在していない。鉄腕アトム自身が非常に人間的なキャラクターとして、人間以外の何者でもないものとして描かれている。だが、浦沢の作品においては、ロボットがあくまでも異質な他者として表象されつつ、その他者としてのロボットの人生が描かれているのだ。そして、あくまでも他者であるために、ロボットたちに対して読者が感情移入することは禁じられている。少なくとも感情移入は容易ではない。この異質さが今後も維持されていくのだろうか? ロボットを他者として最後まで描ききることは可能なのだろうか?
以上がとりあえず一読しての感想。この感想は後々、修正することになるかもしれないが、少なくとも『PLUTOプルートゥ』が『20世紀少年』ともども目が離せない作品であることは確実だ。