一生ものの傑作ライブアルバム

ダニー・ハサウェイ / ソングス・フォー・ユーLIVE!
昨年、発売されたネオ・ソウルの巨人ダニー・ハサウェイの未発表音源満載のライブ・アルバム。このアルバムを何度も聴いていると、33歳で自ら命を絶ったこの天才ミュージシャンの音楽は死後数十年経っても魅力が褪せないどころが、一層強く輝いているように感じられる。
現在でも黒人の社会的状況を歌うアーティストとしてカーティス・メイフィールドとともに尊敬を集めているハサウェイだが、このアルバムにも「いつか自由に」「リトル・ゲットー・ボーイ」「ゲットー」などの代表作が収録されている。
彼の最高傑作「いつか自由に」における極上の甘いメロディには文句のつけようがない。自由になる来るべき<いつか>を待ち望む<今ここ>の、この世のものとは思えないピアノと歌声。夢のような<いつか>が、仮想的に<今ここ>に立ち現れたかのように美しい。
あまりにもたくさんの苦痛と悲惨さを見てきたリトル・ゲットー・ボーイ。その少年を哀愁を帯びたメロディでハサウェイが暖かく歌い上げていく様はまさに感無量だ。
そして、最後を飾る「ゲットー」の何かが取り付いたかのような熱狂的演奏! 演奏の後半では観客との掛け合いで、観客に"Talking about the ghetto"と何度も歌わせるのだが、会場とのあいだに見事な一体感が作りあげられている。この大盛り上がりのライブの場にいることができた人は本当に幸せだと思う。
ほかにもビートルズ「イエスタディ」、スティービー・ワンダー「スーパーウーマン」、マーヴィン・ゲイ「愛のゆくえ」などの見事なカバーも収録。