現実的な国際貢献?

 
 ●吉田鈴香『アマチュアイラクに入るな』(亜紀書房
 ●伊勢崎賢治武装解除』(講談社現代新書
 
 前者は「プロのNGO」がどのように危険地域で活動しているのかに関する分かりやすい概説書。平和構築の現場においても、ビジネス書におけるコンサル会社風フレームワークに基づいた活動がなされていることは少し意外だったが、フレームワークのおかげで分かりやすい解説にはなっており、リーダビリティは高く、理解も容易だ。イラクに行こうなどと思っている人は一読すべし。安全を確保するために、そして成果を挙げるために、どれだけの周到な準備と高度な能力が必要なのかがよく分かる。だが、こうしたフレームワークを身につけていない者には国際貢献などできはしないと決め付けているかのように読める点については、言いたいことは理解できるものの引っかかることは事実だ。要するに、本書においては国際政治もビジネスの同等物にほかならず、平和構築のMBAを取得していないものは現地に行っても使い物にならないという主張がなされている。だが、こうした認識はおそらく正しいのだ。国際紛争解決のスキルやノウハウを蓄積し、最大のリターンを求めていくことが重要だという議論を誰が否定できるだろう?
 後者は世界各国で武装解除を指揮してきた人による国際政治の現場に関するリアルなレポート。東チモールにおいて暫定政府の県知事となった時の話、西アフリカのシエラレオネやアフガンで武装解除を指揮した時の話など、とても興味深い。当然のことだが、ゲリラの武装解除など簡単なことではなく、すべてが手探り状態でなされていることがよく分かる。『アマチュア…』で概論を押さえた人は、各論として本書を読むこともお勧め。泥臭い駆け引きや利害関係の現場の一端を窺うことができる。