フランスのレニクラによる情感溢れるアルバム

 
 ●テテ / ア・ラ・ファヴール・ドゥ・ロートン
 
 フランスのレニクラことテテの2ndアルバム。特に熱唱したり、高音を張り上げたりするわけではない自然体の歌声が、メロウな美メロとともに情感溢れる厚みをもって迫ってくる最高の黒人フォークロック。言葉を口にすれば、それがそのまま歌になっているんじゃないかと思わせるような天性ボーカリスト系。声質はコールドプレイのクリスに少し似ている。
 歌詞のバリエーションも広い。インスピレーションと状況に基づいて立ちションをして武装警官に捕まる歌(笑)とか、往復ビンタの歌(これほど血の流れをよくするものがあるだろうか、これは清浄な電波のように元気を回復させる、これは即席の禅であり気分を爽快にさせる、などと歌われる:笑)などのユニークな歌詞。あるいは、アルバムタイトル曲(秋がやってきたから、この甘美なメランコリーも再びやってくる)や「時代は変わる」(白状しろよ、左翼同士だったらお互い理解しあえるなんて、甘すぎることを考えていたんだろう)、「モンレアル」(オレンジ色と紅色の中間にあるモンレアルの秋、あるいは無)などのメランコリックな歌詞も印象的だ。そして、こうした人生の様々な断片をテテが歌うと、すべてが少しセピア色がかったスナップショットのように懐かしく見えてくるのだ。聴き出すとかなり病み付きになる魅力的な音楽だ。
 3月に初来日公演が予定されているのだが、このアルバムを聴いて、絶対に行こうと思った。2月には来日記念盤として1stアルバムも日本版が発売される。