DAWN PENN / NO,NO,NO

 ご存知ジャマイカのラヴァーズ・クイーン、ドーン・ペンの名作。我ながらひねりがなくて少し気恥ずかしくはあるのだが、実はラヴァーズのミュージシャンで一番好きなのはこのドーン・ペンだ。ラヴァーズ・クイーンと言えば、イギリスのジャネット・ケイを挙げる人も多いだろうが、ジャネットよりもすばらしいと思う。ジャネットは幾分歌唱力に頼りすぎ、大げさにすぎるところがある。ま、ジャネットにサインしてもらったり握手してもらったりして、大喜びしていてるのだから、あまり偉そうなことは言えないのだけれど(笑)。
 さて、ドーン・ペンだ。ゆっくりとしたレゲエのリズムの上に、極上の激甘メロディが乗っかり、恋人たちの歌が歌われる。ラヴァーズであるにもかかわらず、どことなく暗い愁いを漂わせて"No,No,No.....You Don't Love Me And I Know Now..."と歌う代表曲などは、やはり何度聴いても最高だ。あなたがいなくなれば、私の居場所もなくなってしまう。あなたが言うことならなんでもするわ。もしそうしろと言うなら、すぐさま跪いて、あなたに祈りをささげるわ…。ベタな恋愛感情ではあるものの、何度も繰り返される"No,No,No"という言葉が有する音楽性は単なる情念としては説明できない。
 彼女の声は少しメタリックな響きを内に秘めており、そのためスイカに塩をかけた時にように曲の甘みが見事に引き立つ。何より非常に軽やかなのだ。八代亜紀のように地を這うのではなく、都はるみのように飛翔すると言えばいいだろうか? 例えば4曲目の"Night And Day"や5曲目の"My Love Takes Over"などはまさにその真骨頂だ。もちろんアルバム全体を通してハズレ曲なし。
 

No No No

No No No