低価格ビニール傘water frontの画期性

 株式会社シューズセレクションが開発したwater frontというブランド名の3つのビニール傘が注目を集めている。5段式折りたたみ傘「スーパーポケミニ」、小さく平べったいのでポケットに入る「ポケフラット」、その名の通り小さく細い「ぺん細」だ。どれも非常にコンパクトであることが売りの商品。
 先日、街中で雨に出くわした際にたまたま入った店でこれらの傘を見つけ、そのときには「日経優秀製品・サービス賞 優秀賞 日経産業新聞賞」受賞などという告知につられてポケフラットを購入してしまったのだが、これは失敗。使った後にしまう際に、平べったい傘だと閉じてまとめるのが非常に面倒くさいのだ。また、確かにコンパクトではあるものの、傘というものは「ポケフラット」というその名前の通りにはポケットに入れたりもしない。要するに、端的に最も小さいスーパーポケミニを買えばよかったと少しだけ後悔した。
 しかし、スーパーポケミニ、ポケフラット、ぺん細はどれも500円と安価なので、損をしたという印象はない。しかも、幾分不思議ではあるものの、これまで傘の商品開発において、コンパクトさというベネフィットを徹底的に追求する方向はこれまで存在しなかったのだから、現在のヒットはうなずける。カラフルな色のバリエーションも後押ししてか、スーパーポケミニは毎月20万本、ポケフラットとぺん細は毎月10万本も売れているらしい。
 今後の低価格ビニール傘の商品開発はどのような方向に向かうだろうか。おそらく単純な小型化・軽量化においては、もうさほど改良の余地は残っていないだろうが、傘の大きさ(やはり使うときには大きい傘のほうが良い)や強度(風等に負けない)との関連では、まだまだ改良の余地はある。あとは、耐久性(何度も使える)と開閉しやすさ、傘を使った後でも絶対に水漏れしてこない傘袋ぐらいだろうか。あるいは、エコという視点もあるかもしれない。
 もちろんデザイン性という視点もあるにはあるが、色のバリエーションぐらいなら比較的簡単に追随もできるため、画期的な改良とは言いづらい。しかも、デザイン性勝負へのステージの移行は市場が成熟した証であり、差別性のない同じような商品同士の低価格競争になってしまっている可能性が高い。
 現状においては、消費者にとって最も分かりやすく、かつ訴求力もあるビニール傘の差別化のポイントは、やはりコンパクトさにあるだろう。water frontは見事な商品開発だと思う。water frontは街の雑貨屋やドラッグストア、家電量販店など、比較的よく見かける傘なので、何かの拍子に思い出したら、ぜひ一度ご覧あれ。低価格ビニール傘であっても、やはり重要なのは単なる低価格以外の差別化なのだ。
 
シューズセレクション
http://www.water-front.co.jp/