小島寛之 / 使える! 確率的思考

 「まえがき」の切り口上(あなたの前で、「この本を読んだ世界」と「この本を読まなかった世界」が分岐している云々)は大げさだとは思うものの、確率の世界を概観することは素人目にもおもしろい。
 個人的には、第5章の標準偏差の話、第6章の確率に関する僕らの日常感覚が歪んでいるという話、第7章のベイズ推定の話は、「目から鱗」的な示唆に満ちていて非常におもしろかった。
 第8章、第9章も最新の確率理論の説明をしてくれてはいるのだが、僕らの日常的な感覚の蒙を啓くというよりは、僕らの日常的な感覚が確率理論で説明できるようになってきたというような内容であるため、知識としておもしろいというところ。表題の「使える!」というところまではいかないのではないだろうか。
 ところで、さらに知りたい人のための文献案内がないのは少し残念だ。とりあえず著者の『確率的発想法』を手に取ってみようと思う。

使える!確率的思考 (ちくま新書)

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