芳崎せいむ / 金魚屋古書店 3巻

 地下に迷宮のごとき無限の倉庫が広がる漫画古書店を舞台にしたこのシリーズは僕のお気に入りのひとつで、確かに今回の楳図かずおネタのように小学館の販促を兼ねているかのような話(この漫画内で紹介されている楳図作品が、デビュー50周年企画として昨年、小学館から復刻されている)は確かにアレかもしれないが、楳図サロン(楳図かずおの魅力を語り合うカルトサークル:笑)という切り口はおもしろい。
 だが、今回の話のなかで一番おもしろいのは第17話「明日の場所」で、動物園の狼のコーナーの前でなかなか見ることができない狼を見ようと見知らぬ4人が毎日、白土三平の漫画を読みながら待ち続ける話だ。ドラマチックな嵐の夜の狼の登場シーン(?)を経て、この話の主人公は自らの宿命を受け入れることになる。ただし、誤解すべきでないのは、この話において、宿命とは「逃れられないさだめというよりも、腹の底から覚悟を決めた選択」にほかならない点だ。
 第20〜21話「ねこたま堂」もおもしろい。本編では世界をまわる旅行者たちのあいだを『孤独のグルメ』が手渡され、読み次がれていくのだけれど、この『孤独のグルメ』は僕も好きな漫画なのだ。久住昌之が原作の谷口ジロー作品。
 ところで、芳崎せいむの作品としては、テレビ局の深夜の映画放映番組を舞台に映画のネタをまわしていく『テレキネシス』もこの先が楽しみなのだ。これまで取り上げられた映画のなかで最も好きなのはもちろんジョン・ヒューストン監督『アスファルト・ジャングル』。ただし、ジョン・ヒューストン作品としては、芸術的にすぎると言われようが、一番好きなのは遺作の『ザ・デッド』だ!

金魚屋古書店 3 (IKKI COMICS)

金魚屋古書店 3 (IKKI COMICS)