間瀬元朗 / イキガミ1〜2巻

 2巻の帯の「『国家の罠』作者・佐藤優氏激賞!」の文字に惹かれて購入。3話完結の物語が1つの巻に2つ入っている。物語はあと1日で死ぬ人たちの最期が描かれている。
 国民に「生命の価値」を教えるために、「国家繁栄法」という法律に基づき、国民はすべて小学校入学時に予防接種を受けさせられる。この注射には1000本に1本の割合で特殊なナノカプセルが混入しており、それは18歳〜24歳のあらかじめ設定された日に破裂し、その人の命を奪う。死ぬ運命にある人がそのことを告知されるのは死ぬ24時間前。その死を告知する紙は「逝紙(イキガミ)」と呼ばれる。
 物語はこの「逝紙」の配達員を狂言回しに、死ぬ運命を知った人々が24時間にどのような行動を取るのかが描かれていく。
 この漫画を読むと、微妙な感覚を味わうことになる。死ぬ運命を知った人の最期の24時間はそれ自体感動的な物語となっている。なぜ自分なのか? だが、残された時間で自らの生を全うしようとする物語に感動し、「生命の価値」に思いを馳せることこそは、まさに国が「国家繁栄法」で意図したことなのだ。架空ではあれ、あるいは架空であるにもかかわらず、国の思惑通りに僕らの感情が誘導されている!?
 この漫画は、マクロな国家制度の話とミクロな個人の生の話をつなぎながら描くという難しいテーマにチャレンジしている。しかも、オーウェル的な全体主義的管理社会ではなく、この確率的な動物管理的社会こそ、僕らの社会に相応しいと言えるのではないか。まだ作品内の国がどういう国なのかは十分に描かれていないが、この先どのように描かれていくのか楽しみだ。うまくやれば傑作になるかもしれない。とは言え、ミクロな個人の生ばかりを延々と描き続けられたら最悪なので、どうなるかはまだ予断を許さないところ。

イキガミ―魂揺さぶる究極極限ドラマ (1) (ヤングサンデーコミックス)

イキガミ―魂揺さぶる究極極限ドラマ (1) (ヤングサンデーコミックス)