いま聴いている音楽 Balanescu Quartet

バラネスク・カルテット / ルミニッツァ
ピナ・バウシュの作品を見ていたら懐かしい曲が使われていた。バイオリニストのアレクサンダー・バラネスク率いるバラネスク・カルテットの1994年のこのアルバム『ルミニッツァ』収録の"STILL WITH ME"だ*1。さすがにマイケル・ナイマン・バンドにいたバラネスクだけあって、この曲も流れるようなポスト・ミニマルな曲調。バックではサンプリングされた言葉が小さな音量で繰り返される。「置き去りにしたすべての物… それは…まだ私のところにある」
このアルバムは弦楽四重奏によるものにしては非常にポリティカルであり、"DEMOCRACY"や"REVOLUTION"などという曲に至っては政治的な含意のある言葉の朗読のサンプリングが前面に押し出されている*2。タイトルの「ルミニッツァ」も「小さな光」を意味するルーマニア語であり*3チャウシェスク政権崩壊によって見出された「かすかな希望」を意味しているのだとか。ちなみにルーマニアの2003年度の経済成長率は4.9%にまで上昇してきているが、依然として1990年の水準までも経済規模は回復していない。
バラネスク・カルテットは弦楽四重奏と言っても、かなりポップで聴きやすい。少し単調な嫌いは確かにあるものの、見事な演奏力によって緊張感のある曲になっている。

*1:第一部では日本人ダンサー瀬山亜津咲がソロで踊るさいに使われていたし、第二部では黒人ダンサーが踊っていた

*2:「僕らは民主主義的になりたいんだ」とか「革命は偉大で楽しい」とか。

*3:アレクサンダー・バラネスクはルーマニア