訳の分からない日本語の力 その3

上野耕路久保田真吾 / 捏造と贋作
元8カニブンノイチの二人による1999年のアルバム。とりあえず1曲目の「密林快男児」を。

土人を率いて 先陣立って
悪しき白人 野望を下す
オーオニバスを次から次へと 飛びうつるのはまるで源義経か!
秘密結社の水晶玉に映るのは白い歯、涼しき眼
白刃かざした勇気の人は 密林貫く風雲児
我らが密林快男児

土人」などという、IMEでも変換がすっと出てこない差別用語に、「悪しき白人」や「オーオニバス」。ジャングルかどこかの話かと思えば、「まるで源義経か」という例え。「秘密結社」「水晶玉」「密林」「風雲児」「快男児」…。なんじゃこりゃ?
と思うかと言えば、実のところ、これはあまり訳が分からなくはない(笑)。読めば分かるように、意味はすっと通るし、違和感も残らない。何せアルバムタイトルが『捏造と贋作』というだけに、あまりにも分かりやすすぎるとさえ言える。
実際、音楽自体、あたかも伊福部昭の「SF交響ファンタジー」(要するにゴジラのテーマね)を髣髴させるような、上野耕路らしくアヴァンギャルドな音作りであって、ゲルニカともつながるモダンなテイストを維持している。要するに、変拍子や転調を繰り返しつつ、不可解っぽい歌詞を歌ったアヴァン・ポップだ。
などと言うと、悪口を言っているみたいな気になってくるが、出来そのものは決して悪くないと思う。ゲルニカが嫌いじゃない人ならば、このアルバムも嫌いではないと思う。もちろん戸川純ほどのボーカルの凄みはないのだけれど。と言うと、やっぱり悪口を言っているみたいだなぁ…。
ちなみに、伊福部昭と言えば、「SF交響ファンタジー」以外にも、「シンフォニア・タプカーラ」「ピアノとオーケストラのためのリトミカ・オスティナータ」を収録した伊福部昭のアルバムがいまタワレコで890円で売られていて、安いからお奨め。演奏はロシア・フィルハーモニー管弦楽団