冴えない大人の敗者復活戦

原作:宮藤官九郎 漫画:山田玲司ゼブラーマン』(小学館
主人公の職業は教師なのだが、生徒からは見離されているダメ教師だし、家庭も崩壊。本当にダメな大人なのだ。その彼がヒーローオタクが高じて、なりゆきで子供の頃にTVでやっていたゼブラーマンのコスチュームに身を包み、悪に向かって立ち向かっていくことになるという話。もちろん必殺技など持っていないし、決して強くもない。っていうか、端的に弱い。泣き言ばかり言っている情けないヒーローなのだ。
このような『ゼブラーマン』だが、端的に言えば、浦沢直樹の『21世紀少年』に似ている。どちらも冴えない大人が子供の頃の夢(世界を守る)を実現しようと悪戦苦闘しているのだ(この点はスピルバーグの『フック』などとも共通している)。確かに『21世紀少年』は今の40代、『ゼブラーマン』は今の30代あたりの世代が主人公に相当しているという違いはあるものの、どちらも広くは新人類、オタク世代、シラケの世代と言われた世代であり、その世代がシラケから観念的に脱出しようとしていると言えば、言いすぎだろうか。
ところで、どちらの作品も事件の背後に原テクストが存在し、現実がその原テクストに基づいて引き起こされているという構成になっている点も共通している(『20世紀少年』における「予言の書」、『ゼブラーマン』におけるTV版「ゼブラーマン」のシナリオ)*1。どちらもミステリー的な形式を取っているのだが、ミステリーそのものが現テクストの再現という形式を必然的に伴うことになると言っていたのは、『探偵のクリティーク』のすが秀美だっただろうか。以前に読んだので論旨の詳細は忘れた。確か「ミステリーは過去に行われた殺人を現テクストとして、探偵がそれを再演するという構造を有している」というような内容だったはず*2
この二つの漫画のどちらがおもしろいかと言われれば、画力といい、過去と現在(そして未来)との重層的な構造と言い、魅力的な脇役陣と言い、圧倒的に『20世紀少年』なのだが、『ゼブラーマン』も決して悪くない。現在4巻まで出ており、次がおそらく最終巻となる。漫画『ゼブラーマン』は決め言葉通り、見事に白黒つけられるのか!?(もちろんシマウマだから、念のため:笑)

*1:さらにはどちらも原テクストに更に続きがあったという点も共通している。『20世紀少年』における「新・予言の書」、『ゼブラーマン』における途中で打ち切られたTVの先の部分について書かれているシナリオ。

*2:そして、例えば童謡殺人ものはその構造をより明瞭に描き出しているということになる。