爆笑優良企業研究

フェルディナント・ヤマグチ『恋愛投資概論』(ソフトバンク・パブリッシング)
笑える。切込隊長こと山本一郎の『投資情報のカラクリ』を購入しようとした時に、表紙の折り返し部分の広告に爆笑優良企業研究と書いてあったので、ついこっち方を購入(笑)。
「恋愛は投資である」という考えに基づき、投資対象としての女性の研究している本。著者は恋愛ポートフォリオの構築を説く。つまり、「複数の資産と銘柄を組み合わせて保有する」ことの重要性を主張する。要するに分散投資をして、リスクを押さえるということ。
著者が主張する恋愛ポートフォリオのメリットは以下のとおり。
 ・複数の案件を同時進行で楽しむことができる
 ・別離の際の精神的ショックを緩和できる
 ・精神的な余裕が生じ、新規案件へのアプローチがスムーズにできる
 ・プライオリティの低い順に、新しい手法のデートを試験的に実施できる
 ・他の案件で試した実験結果のフィードバック、フィードフォワードができる
もちろん、良い事ずくめではない。デメリットは以下のとおり。
 ・タイムマネジメントが複雑化する
 ・記憶マネジメントが複雑化する
 ・デートのコストがかさむ
 ・同じ映画を何度も見るハメになる
 ・同じ食事を何度も食べるハメになる
だが、こうした内容はあくまでも本書の前提条件であり、中心的に述べられているのは女性が勤めている企業の業界研究である。つまり、「女性は所属する組織の風土に染まりやすい」という仮説に基づき、エリート投資家は女性が勤める企業の風土を徹底的に調査する必要があると判断し、行った企業調査の報告書が本書なのである。
本書で取り上げられているのは日本航空JTBから、NTK、アクセンチュア東京都庁まで全10社に及ぶ。内容は各社の概要、職場の雰囲気、ファッションなどから始まり、彼らの業界独自の隠語や避けるべき話題、事前に読むべき本などにまで及ぶ徹底ぶりだ(笑)。
例えば、三井物産では、この商社の取り扱いブランドのリストを挙げ、そのブランドのプレゼントは避けるようにアドバイスしている。ヴェルサーチなどは時に9割引で社内販売されているらしい。あるいは、商社の隠語には英語の略語が多いらしく、ディスクレパンシー(くい違い)を略したディスクレという言葉があるとのこと。そのため、相手が仕事の振りをして「はい。ディスクレです」などと携帯で話していたならば、その投資の成功確率は低いということになる(笑)。
要するに、各社に勤める女性に関するヤマグチ氏の主観的な分析、その企業・業界に関する意外に真面目な内容、どうでもいいトリビア(笑)の3つの要素をウィット(?)に富んだ笑える文章で記載したのが本書。