宮崎駿 / ハウルの動く城

 今更ながらにようやく見てきた。悪くはないものの傑作と言えるかどうかは疑問。物語的にはハウルカルシファーの契約の意味がよく分からず、「ハウルの心がない」というのも意味が分からない。髪が金髪でなくなっただけで泣き叫んで落ち込んだり、ヒロインのソフィーのことを守りたいと言ったりしているのだから、心はあるんじゃないだろうか? 見ている限りにおいては、『最終兵器彼女』的な終末感が漂っているようではあるのだが、ハウルの抱える問題の深刻さはいまひとつ伝わってこない*1。そもそも国の王室付き魔法使いサリマンはあれだけハウルを追い込むのに労力を使う暇があれば、敵の攻撃から国を守ることになぜ注力しないのか?
 作画的には「動く城」は文句なく圧巻。だが、最後のほうで若さを取り戻したソフィーの髪について、ハウルが「星のようにきれいだ」というような発言をするのだが、お婆さんソフィーの髪との違いが不明瞭。これはお婆さんの白髪と違うのか? また、ハウルやソフィーを追いかけてくる「ぶよぶよした兵隊」の形象があまり魅力的ではない。『千と千尋の神隠し』に出てくる半透明のお化けの奇妙な存在感の方が格段に魅力的だ。荒地の魔女もいまひとつ迫力が足らない。
 ちなみに火の悪魔カルシファーや謎の犬ヒン、かかしのカブ*2など、チャーミングなサブキャラクターを出してくるところはさすが。とりわけほとんど役に立たないヒンの存在はなかなか効いている。
 

*1:よく分からず戦争が起きており、ハウルが義務として戦わなくてはいけないというところも『最終兵器彼女』っぽいが、さすがに全体として『最終兵器彼女』ほどには終末感が漂ってはいない。やっぱり宮崎駿だからね。

*2:この映画を見ると多くの人が『オズの魔法使い』を思い出すだろうが、かかしなどはまさに直球。