アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ / アモーレス・ペロス

 はじめてみたが、非常におもしろい。ドキュメンタリー的なテイストを残すカメラでもって残酷な現実が描写されていく。物語はロンド形式という形式(要するに、ある物語でチラッと登場する人物が別の物語では主役になっているというやつ)が採用されているのだが、主役たちには単に同じ街に暮らしているというだけの関係しかない。だが、それらの相互に無関係な登場人物たちが皆、徹底的に孤立し孤独であるために、メキシコ社会の現実の残酷さが際立つ。
 主役たちは皆、本人ないし近しい周りの人が犬を飼っているのだが、それらの犬も悲惨な運命をたどることになる。人間も犬もいわゆる犬の生活(チャップリン)というやつだ。メキシコからアメリカに不法入国しようとしているのだろうか、主人公の一人である老人が犬とともに立っている、向こうに都会が見える荒涼とした荒野の光景も圧巻だ。
 ロック・エン・エスパニョール(スペイン語ロック)を中心とした映画音楽も印象に残る。サントラを探してみようっと。
 

アモーレス・ペロス ― スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

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