川島蓉子 / 伊勢丹な人々
『ビームス戦略』の著者による伊勢丹賛歌。新宿伊勢丹の店内セレクトショップ「解放区」「リ・スタイル」「BPQC」にリニューアルしたメンズ館の各売場に対する分析、というか感想を中心に、伊勢丹のすばらしさを讃えてみせる。
確かに新宿伊勢丹は驚異的な店舗だ。これだけ積極的な企画提案を継続している店舗は類を見ないと言ってよい。つねに伊勢丹をウォッチし続けてきた著者だからこそ書けたことも多々あるように思う。
ただし、基本的にはあくまでエッセイのようなものなので、鋭い分析を期待してはいけない。片意地張らずリラックスしながら楽しく読むべき本。これは批判にはならないと思う、のだけれど…。
各売り場(そう言えば、伊勢丹では消費者主体の立場からお買い場というのではなかっただろうか)の評価を、その売場作った店員たちの思いに還元してしまいな傾向があるところは気にかかる。店員の思いがどうであろうと、実際の売り場がどうなっているのかをもう少し具体的に記述してほしかったと思う。店内写真がほとんどないのも残念。著者による記述の理解を助ける、あるいは反証するにもこれではよく分からない。
ところで、「解放区」「リ・スタイル」を企画し、「BPQC」の立ち上げにも関与したのは藤巻幸夫だが、彼はその後、福助の社長を経由し、現在ではIYG生活研究所社長(イトーヨーカドーの役員でもある)となっている。その彼が今日の朝日新聞別紙『be』の連載「フジマキに聞け」で「総合スーパーに未来はないのでは?」との質問に、「総合スーパー、そしてイトーヨーカドーの未来は明るい」と答えていた。
藤巻の回答の根拠はヨーカドーの徹底した現場主義にあるのだが、普通に考えてヨーカドーは別格だと思う。ヨーカドーとトップを争う(と言われる)イオンと比較しても、その企業としての力の差は明らかだ(イオンの強みは専門店街を併設する郊外型の大型ショッピングセンターというフォーマットのみではないか)。要するに、ヨーカドーはともかく、その他の総合スーパーの未来はあまり明るくないのではないかということ。可能性はあるが、可能性をつかめる企業がほかに思い浮かばない。
- 作者: 川島蓉子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2005/05/14
- メディア: 単行本
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