サンボマスター / サンボマスターは君に語りかける

 TV版『電車男』の主題歌にも抜擢されるなど、最近、大ブレイク中のサンボマスターだが、アルバムを聴いてみても基本的な感想は2005年4月24日のエントリとまったく変わらない。
 Voの山口隆は声量はないし、声質もロック向きとはとても言えまい。彼らの楽器は決してひどいと言うわけではないが、圧巻の演奏とはいかない。では、彼らの強みは何なのか? 答えはただひとつ「熱さ」だ。ロックが初期衝動一発の素人音楽だとするならば、サンボマスターはまさにロックの本質に触れていると言えなくもない。要するに、表現主義的に自らの愚直なまでの思いを絶叫してみるということ。しかも、サンボマスターは万人に合唱可能なやり方でそうしている。
 90年代に観客の合唱をロックに取り戻すことで驚異の成功を収めたのはオアシスだが、サンボマスターをもって日本にもついにオアシスが登場したのだと言えるのかもしれない(ブームに乗って当時あれこれと日本に登場したオアシス・フォロアーたちは論外)。そう、熱い合唱系ロック・ミュージシャンというのは意外に日本に欠けていたのかもしれない。サンボマスターのライブにおいて、観客達が我を忘れながら絶唱している姿は目に浮かぶようだ。
 だが、僕はどうしても彼らの音楽に対してそこまで無条件に熱くなれない。決して嫌いな音楽ではない。だが、それほど凄いとは思えないのだ。そのためやはり、前回のエントリと同じ結論になってしまう。渋谷陽一などの年配のロック好きたちがサンボマスターにコロッと参ってしまうのは、分かるようでやはり分からない。
 とりあえず再来週のフジロックでは彼らのライヴを見てきたいとは思う。そのぐらいに気になるバンドではあるのだ…。