フジロック・フェスティバル'05三日目 2005/07/31/Sun.

 ついに三日目。これで最後なのでがんばって書こう。この日に印象的だったのは、ソウル・フラワー・ユニオン、モービー、ニュー・オーダープライマル・スクリーム
 
 と書いたものの、やはり方針変更(笑)。既に長くなりそうな気配が無きにしも非ずだが、とりあえずは上記バンド以外の公演について簡単に述べておきたい。佐野史郎率いるsanchはイマイチ(歌が下手。ちなみに加藤紀子がゲスト出演していた)。bonobosフィッシュマンズの影響圏域から予想以上に急激に離脱しつつあるようなのことが分かり、少し見直した。押尾コータローは最後のラヴェルボレロとアンコールのみを見たが、意外におもしろかった。関西系のノリもよろし。アンコールを請われて、ぬけぬけと適当な歌を即興でアカペラで歌っているのに爆笑(フジロック・フェスティバル・オレンジコート〜♪:笑)。そして、予期せぬ見っけものだったのが、上原ひろみ。ちょっと見るだけのつもりだったのだが、つい最後まで見てしまい、当初見る予定だったジョン・バトラー・トリオを見逃してしまった。上原ひろみ率いるピアノ・トリオはぜひとも再見。
 
 さて、本編。まずはソウル・フラワー・ユニオンだ。もちろん文句なしにすばらしい。僕は彼らの大ファンなのだ。彼らの脱領域的な音楽の自由奔放さは毎度の如く感動的だ。阿波踊りのように両手を挙げて踊りまくり。なんて爽快なんだろうか!?
 初日のサンボマスターに比べると客が少ないのが残念だが、僕は彼らの音楽こそ多くの人に聴いてほしいと思う。あの演奏のうねりに身を任せてみてほしいと思う。盛り上げまくる定番「海行かば、山行かば、踊るかばね」、SFU屈指の名曲「満月の夕」、彼らが最もアイリッシュに接近した「風の市」(実は一番好きかも)、彼ら流のバラード「荒地」など、あっという間の1時間。希望を言えば、アイリッシュ・トラッドの名曲「フォギー・デュー」やカオティックに盛り上がる「もののけと遊ぶ庭」なども聴きたかったと思うが、まぁそれは望みすぎというもの。
 
 で、次にモービー。彼のライヴをはじめて見たのだが、これほど素晴らしいとは思わなかった。諸事情により、早々に戦線離脱する羽目になったのが悔やまれる。予想以上に強力で、雨のなか圧倒的な力技を見せ付けていくのだ。次の来日は必ず見に行こうと決意。もしかすると彼のライヴを発見できたことが今回のフジロックの最大の収穫だったと言えるかもしれない。
 
 そして、本日のヘッドライナーとなるニュー・オーダー、の前に、ひとつ飛ばして、先にクロージング・バンドのプライマル・スクリームについて書いておく。いつも思うのだが、彼らこそ現在最強のロックバンドのひとつだ。ロックが凶暴さを失っていない稀有な例。率直に言って、モービーの素晴らしさですら、彼らの前には残念ながら霞んでしまう。不穏に音程を外すジョン・ライドンのようなボビーのボーカル、大地を揺るがすようなマニのベース、神経を苛立たせるサイケデリックなケヴィンのギターなど、圧倒的な音の厚みでもって襲い掛かってくる。フジの最終、翌日から仕事の身にこれを聴かせるか!?
 
 そして、最後に本日のヘッドライナー、我らがニュー・オーダーニュー・オーダー・チルドレンとでも言うべきモービーとプライマル・スクリームに挟まれての登場だが、率直に言ってクオリティの水準のみで論じるならば、残念ながらモービーやプライマルズに及ばないと言うしかない。そもそも周知のようにニュー・オーダーのメンバーたちは演奏があまりうまくない(笑)。だが、今回は彼らの音楽を聴くために、僕はシガー・ロスを躊躇なく捨てた。既に音自体も古臭く聴こえるかもしれないニュー・オーダーだが、それでも彼らがいなければモービーやプライマルズはなかったのだ。
 「クリスタル」「リグレット」「トゥルー・フェイス」「ビザール・ラブ・トライアングル」「ブルー・マンディ」などなど、ヒット曲が目白押しで感涙。しかも、「ラブ・ウィル・ティア・アス・パート・アゲイン」を含む、ジョイ・ディビジョン時代の曲もいくつかやってくれたのだから、これ以上、何を望む。
 確かに彼らのライブを体験していても、どうも盛り上がりに欠ける感じは否めない。楽曲そのものにオフ・ビートな感覚が付きまとっているからだ。「ブルー・マンディ」や「ラブ・ウィル〜」などが典型的だが、全体として淡々とした曲調もさることながら、サビの部分自体が低音で構成されているため、普通の意味で盛り上がらないことこの上ない。だが、この淡々とした機械的な暗さこそ、ある時期の若者たちの精神が深く共振したものにほかならないのだ。そして、実のところそれはかつての若者たちの精神に限らないはずだ。
 ライヴでは多くの人が声を上げてニュー・オーダーと一緒に合唱していた。合唱? だが、低い音程のために声はまったく通らず(自分の声は出ているのか?)、無機的なメロディーは歌っていても周りの人との一体感などまるで感じられない。不可避的な分かりあえなさのようなものが、ぬるっと触知できるかのように、そこに…
 
 ところで、今年、ニュー・オーダーに関連するミュージシャン/バンドがさらに二組、日本に上陸する。ひとつは元スマパンビリー・コーガン。彼がニュー・オーダーのファンであることは広く知られている。そして、さらにもうひとつ。ニュー・オーダーの前身ジョイ・ディヴィジョンの「デッド・ソウルズ」をカバーしたことがあるそのバンドこそ、最後のカリスマ、トレント・レズナー率いる現代最大のロックバンド、ナイン・インチ・ネイルズにほかならない。ビリー・コーガンには悪いが、やはり決定的に重要なのはNINだ。今週末、ついに彼らの二度目の来日公演が行われる。もしかすると2005年の夏はNINでもって記憶されることになるかもしれない。期待が膨らむ。
 
 
 駆け足ではあるものの、フジについてはとりあえずこれでおしまい。疲れた。