サマーソニック05大阪 初日 2005/08/13/Sat.

見ることができたアーティスト順に簡単なコメントを。
 
デス・キャブ・フォー・キューティー
 あまり真面目に聴かなかったので、あれこれ言うまい。楽曲のひねり具合は決して嫌いではないものの、曲そのものとして十分に練りきれていない印象。
 
ロディ・フレイム (全部見た)
 僕が初日の出演者のなかで最初に楽しみにしていたのが、この元アズテック・カメラことロディ・フレイムだ。そして、彼はやはり期待に応えてくれた。さすがはネオアコの帝王。彼一人で登場し、ギターで弾き語るだけのシンプルな演奏であるにもかかわらず、古典的な意味での完成度を誇る見事な公演だ。歌もギターも完璧と言ってよいし、楽曲そのものの美しさと言ったら…。観客が少なかったのが非常に残念。
 ただし、彼が観客にアズテック・カメラ時代の名曲を歌わせようとしたことには無理があった。残念だが、もはやほとんどの人は彼の過去の名曲など知らないようなのだ。観客の歌声のかぼそさが悲しい。率直に言って、最後の2曲、「思い出のサニー・ビート」と「イン・マイ・ハート」ぐらいは知っておいてほしいと思う。そして、大合唱を…。
 小さなライブハウスでも良いので、ぜひ単独公演をしてほしい。他のエリアが興味ないのならば、名古屋公演のみでもOK。彼は決して過去の人ではない。それどころかこれほどクオリティの高いミュージシャンなんてそうはいないのだ。
 
シチズン・コープ (全部見た)
 本日最大の見っけもの。何の予備知識もなしにぶらっと見に行ったら、最後まで見入ってしまった。レゲエをベースにしたアメリカン・ルーツ・ロックと言えばいいだろうか。悲哀感がゆったりと漂う演奏にぐっと引き寄せられる。ただし、彼の枯れた歌声に含まれているメタリックな響きは好き嫌いの分かれるところかもしれない。しかし、その歌声の魅力にハマれば必ずとりこになる。客は50人もいなかったのではないか。彼のCDは買う。
 
MINMI
 ちらっと見ただけ。さすがは日本のダンスホール・レゲエ・クイーン、観客の盛り上げ方は非常にうまい。ただし、あまり興味がでなかったので、これ以上あれこれ言うまい。
 
パブリック・エネミー (全部見た)
 パブリック・エネミーは「カウンター・カルチャーの申し子」的なポジショニングで大ブレイクしたものの、時代にすぐに追い越されてしまったという印象が強かった。社会に対する異議申し立てのHipHopとして華々しく登場したものの急激に失速し、犯罪者すれすれの(っていうか、犯罪者そのものの)ギャングスタ・ラップへと時代のリアリティが移行してしまったというような印象が。事実、そのような整理も多かったはずだ。
 だが、彼らのライヴを見れば、彼らが決して失速などしていなかったことがよく分かる。彼らの異議申し立ての強度は圧巻だし、演奏もパワフルであり、パフォーマンスの楽しさも申し分ない。これも客が予想以上に少なかったのが残念な公演。パブリック・エネミーはやはり依然として重要なHipHopアーティストであり続けている。
 
●ザ・ラーズ (全部見た)
 本日、最も楽しみにしていたのがこのザ・ラーズだ。90年に発表した傑作アルバムを1枚だけ残して去っていった彼らがついに再結成し、僕らの前に姿を現したのだ。そう、サマソニ初日はこのザ・ラーズを見るためにこそやって来たのだ。もちろん演奏は完璧。特にリー・メイヴァースの乾いた歌声は、楽曲が懐メロ的な感傷性をまとうことを許さず、曲そのものの端正な美しさだけを際立たせている。いや、彼らの曲自体が感傷性とは無縁の、オリジナリティ溢れる唯一無二のものであり、ただひたすらPOPだ。客観的にはかなり捻くれた曲だと思うが、ただひたすら美しい。彼らはぜひこのまま2ndアルバムを作ってほしい。1stだけで伝説になるにはもったいなさすぎる才能だ。
 ところで、ロディ・フレイムとは異なり、ザ・ラーズの代表曲「ゼア・シー・ゴーズ」では観客たちの合唱が成立していた。このあたりはザ・ラーズがその後のブリット・ポップの先駆けとなっていたことが原因だと思う。おそらくUKロック/ポップス好きは、ブリット・ポップ以前と以後とで大きな断絶がある。そして、それ以後のリスナーはそれ以前の曲を知らない可能性が高い。逆も同様。
 閑話休題。彼らは特にMCもなく、ひたすら淡々と演奏を続けているだけだが、意外に観客を楽しませようとしている。
 例えば、彼らのラストはサマソニ・イヴでのオアシスと同様、ザ・フーの「マイ・ジェネレーション」だった。やはりUKミュージシャンたちにとって、ザ・フーは特別なのだ。オアシスによるカバーとは異なり、熱唱するのではなく、徹底的にクールなアレンジは味がある。ちなみにアンコールの最後は「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」。
 そして、彼らの代表曲「ゼア・シー・ゴーズ」。これは本編で演奏されたにもかかわらず、なんとアンコールでも再度演奏してくれたのだ。無愛想であるにも関わらず、リーってもしかしてサービス精神旺盛? もちろん観客は大喜び。踊りまくり、大合唱。
 
●オアシス
 ザ・ラーズ後に駆けつけ、何だかんだで1時間ぐらいは聴くことができた。入場しての感想は、なんでこんなにたくさんの人がいるのかということと、なんでこんなに音量が小さいのかということの2点。前者はまぁやはりみんなオアシスが大好きなのだということで別にいいのだが、後者はいかがなものか。後ろのほうなどまわりの人と普通に会話ができるぐらいに音量が小さいのだ。BGM程度の音量。これは詐欺に近い!
 こんな音量では盛り上がれるわけがないと、できる限り前のほうに移動を図ったのだが、途中で挫折。あまりの人の多さに前に進めないのだ…。しかし、それでも、それなりには前方に移動したにもかかわらず、まだまだ全然、音量が足りない。もっと音量を!
 演奏した曲は名古屋と一緒ではないだろうか。最後はもちろんザ・フーの「マイ・ジェネレーション」。う〜ん、これでオアシス版「マイ・ジェネレーション」を聴くのは4回目だ。あるいは、ザ・ラーズとともに、この日に限って2回も聴いた。オアシス版はオーソドックスにロック風味の強いカバーだが、オアシスはそれでいいのだ。原曲の精神を見事に受け継いでいる。