サマーソニック05大阪 二日目 2005/08/14/Sun.

最後に残っていたNINの感想をとっとと片付けよう。いい加減、ロックフェスの感想には飽きてきた(笑)。
 
ナイン・インチ・ネイルズ (全部見た)
 そもそも今回のサマソニは、ナイン・インチ・ネイルズことトレント・レズナーを見るためにこそ参加を決めた。NINの前にやったスリップノットに比べて客が少ないことなどはどうでもいい。彼らが間違いなく現在最高のロック・バンドであることを証明する圧巻のライヴだった。十分に報われた。
 単独公演と比べると公演時間が短いせいもあってか、全体的にはノリのよい、と言うか、徹底的に激しく暴力的なハードロックの楽曲群が中心に構成されていた。そのため、静謐なる狂気を湛えた「ダウンワード・スパイラル」も、個人にとっての世界が過ぎ去る様を荘厳に描き出す「ザ・デイ・ザ・ワールド・ウェント・アウェイ」も、トレントが声を音程を外しながら孤独に愛を叫ぶ「オール・ザ・ラヴ・イン・ザ・ワールド」もやらなかった。だが、それもどうでもいい。
 今回演奏された曲についてさきほど「暴力的」という言葉を使ったが、NINの暴力は何よりも自らの内側に向かう暴力だ。もがき苦しむ、その苦しみこそを表象する。垂直に叩きつける強烈なリズムに乗って、「リアルな何かがあればいいのに、真実の何かがあればいいのに」と叫ぶ「ウィッシュ」。あるいは、ハードな曲調から一転して美しく静かなピアノに沿って「皮膚をつまんで裏返してみなよ。ほら気分が良くなっただろう?」とつぶやく「マーチ・オブ・ザ・ピッグス」。「自分が信じたいものにしがみ付いているなんてナイーヴにすぎる。分かってるさ。でも、俺はしがみ付き続ける…」と歌う「ザ・ハンド・ザット・フィーズ」。こうした絶望的な希求、自傷、自嘲などこそがNINの主要モチーフであり、重苦しくも凶暴な音圧でもってそれらを叫び捨てていく。NINの音楽が同じハードロックでもディープ・パープルやスリップノットほどに聴き易くないことは明らかだ。
 ドラッグから抜け出した云々にはあまり興味がない。髪も短く刈り、逞しい腕を振り上げ、大汗をかきながら叫ぶトレント・レズナーの姿をただ見るだけで、観客も一気にヒートしていたはずだ。彼はものすごい集中力で、ギターを力強く弾き、ピアノを静かに奏で、叫び、つぶやく。
 本公演における圧巻のひとつとして、やはり「ハート」について触れないわけにはいかない。「まだ感覚が残っているのかどうか、今日、試しに自分を傷つけてみた」という自傷の呟きから始まるこの静かな曲は、まさにNINの真骨頂だ。繰り返される静かなギターの単調なメロディが夜の大阪に広がっていく。ドラムが加わりだし、さらにギターとベースが突然の終局を告げる。過ぎさった過去を取り戻したいという願いに対し、楽器が冷酷な現実を告げる…。
 
 ところで、最後にサマソニがアレな件について2つ。
 その1。昨日のオアシスの反省を踏まえて、ステージ前のライヴピットに入ったため、昨日よりははるかにマシだったものの、それでも音量は物足りない。もっと音量を! 近隣対策なのだろうとは思うが、例えば東京会場と大阪会場とで音量は同じなのだろうか? それぞれ具体的な数値を公表してほしい。事前に音量が小さいと分かっていれば、東京まで見に行ったのに。
 その2。花火のタイミングを考えてほしい。いくらなんでも「サムシング・アイ・キャン・ネヴァー・ハヴ」の最中にやることはないのではないか。静かなピアノの音色とトレント・レズナーの歌声だけが響くこの曲の最中に、「君が死んでくれていたらいいのに」という言葉が苦しげに絞り出されるこの曲の最中に………まさか花火を上げるなんて…。
 
以上。
 
これでここしばらく続いていた夏のロックフェスはおしまい。疲れた。もちろんそれ以上に楽しかったのだけれど。