アリルド・アンデルセン・グループ / エレクトラ

 ノルウェーのベーシスト、アンデルセンソフォクレス原作の舞台『エレクトラ』のために作った音楽。最高にかっこいい。
 ソフォクレスのための音楽とは言え、舞台監督からの注文が「現代的な音楽を」だったことから、まさに全編が非常に現代的な音作りとなっている。霧のなかの風景に迷い込んだような音。どこに行くとも分からない茫漠とした空間が構築され、そのなかに運命を告げる音が立ち現れる。ギリシャ悲劇の音楽として申し分のない完璧な出来栄えではないか。ぜひとも生で聴いてみたかったと思う。
 特に気になるのは、全体を通して活躍するアルヴェ・ヘンリクセンのトランペットだ。やかましい印象の強い楽器であるにもかかわらず、この幽玄の世界にたゆたうような音を静かに響かせており、まさに圧巻だ。もちろん運命そのものの胎動のようなリズム隊(アンデルセン自身によるベースとふたりのパーカッション)やギリシャの女性シンガーたちによる古代ギリシャ語でのボーカルもすばらしい。傑作。夏の夜に聴いていると汗も引く。
 

エレクトラ

エレクトラ