仲正昌樹 / なぜ「話」は通じないのか

 なぜ「話」は通じないのか? 答えはみんな人の話を聴かないから。なぜ聴かないのかと言えば、要するにみんな自分の物語にハマっていて、そこから抜け出そうとはしないから。あるいは、他者が自分とは異なる物語を有しているという事実を想像するに至らないから。
 これだけを取り上げれば単純な回答だが、本書のおもしろさは、人々が如何に人の話を聴かないのかを、自らに降りかかった「事件」(?)を例に、具体的に書いている点になる。こうしておもしろがるのは愚劣な読み方かもしれないが、事実、そうなのだから仕方がない。そうした「事件」を記述しながら、相手の間違いや馬鹿さ加減を罵倒し、理論的なまとめをおこなっていくという流れが基本的な造り。
 ところで、本書を読むのがどういう層なのか想像がつかないのだが、やはり現代思想好きの学生が中心となるのだろうか?

なぜ「話」は通じないのか―コミュニケーションの不自由論

なぜ「話」は通じないのか―コミュニケーションの不自由論