マウリツィオ・ポリーニ @ ザ・シンフォニーホール 2005/11/12/Sat.

 秋のクラシック祭りもついに折り返し地点を迎えた。今日は大阪のザ・シンフォニーホールポリーニ11月5日のエントリに書いたように、今回のポリーニの来日は現代音楽を中心としたプログラムの「ポリーニ・プロジェクト2」以外に、オール・ベートーベン・プログラムとオール・ショパン・プログラムの2種類のピアノ・リサイタルが企画されている。そのうち、オール・ベートーベンは諦め、オール・ショパンのみチケットを取っていたのだ。しかも、オール・ショパンは東京と大阪の2箇所で開催されるため、今回はより近い大阪へ。
 正直言って、冒頭の「3つの夜想曲」が始まったときに少し不安になったことは事実だ。彼の演奏はこの手のゆっくりとした美しいメロディは明らかに不向きであって、妙に平板な響きが気になったのだが、結局はそれも杞憂にすぎなかった。後半になるにつれて、手数、と言うか指数の多い曲になってくればポリーニの独壇場。見事な技術が際立ち、ぐいぐいと引き込まれていく。
 印象的なプログラムと言えば、やはりスケルツォ第1番と2つのポロネーズだ。特に英雄ポロネーズの熱を帯びた演奏は素晴らしい。彼の演奏は思ったよりも淡白だ。もったいぶったタメを作ったりせず、これだけの難曲を何食わぬ顔で弾きこなしてしまっている。何よりも速さを重視しているかのようだ。もちろん、この手の淡白な演奏が好きではない人もいるかもしれない。
 だが、僕が最も感動的だったのはアンコールの「バラード第1番」だ。この曲はポリーニのクリアな音が非常によく似合うと思う。暗闇のなかに音が小さく弾け跳んでいるかのような静かな導入部から、強烈に鍵盤が叩きつけられ音が次々と爆発していく後半部に至るまで、息を呑むほどに美しい数分間。
 観客のノリもよく、拍手が止む気配はまったくなかった。ポリーニも本日が日本公演最終日だったためか、サービス精神旺盛にもアンコールを4曲もやってくれた。非常に後味の良い公演。
 ちなみに、「2つの夜想曲op.55」や「前奏曲『雨だれ』」「バラード第1番」は、昨年の来日のプログラムでも演奏されている。2004年5月12日のエントリを参照。
 
オール・ショパン・プログラム
・3つの夜想曲 op.15
・バラード第3番 op.47
・2つの夜想曲 op.48
スケルツォ第1番 op.20
・2つの夜想曲 op.55
・2つの夜想曲 op.62
ポロネーズ第5番 op.44
ポロネーズ第6番 op.53《英雄》
アンコール
前奏曲「雨だれ」 op.28-15
・バラード第1番 op.23
・練習曲「革命」 op.10-12
・練習曲 op.10-4