electraglide2005 @大阪ACTホール 2005/11/26/Sat.

 一週間以上経ってしまったが、エレクトラグライド。今年のエレグラアンダーワールド、コールドカット、オウテカエイドリアン・シャーウッド、クリス・カニングハムなど、過去最強との呼び声も高い。では、実情はどうか。
 まぁ、おもしろかったというところだろうか。アンダーワールドはさすがに盛り上がったし、「ボーン・スリッピー」が始まった瞬間など、この夜最高の叫び声が会場中に響きわたっていた。コールドカットも悪くない。カール・コックスも明け方のあの時間帯でなければ、もっと盛り上がれたと思う(さすがにあの時間帯であのボルテージの高さは脳に響く…)。
 オウテカは思ったよりもアグレッシブな音作りで驚いた。演出はひたすら地味で、暗闇のなか複雑なリズムが爆音で鳴り響いているストイックさはいかにも彼ららしいと言うべきだ。
 ところで、クリス・カニングハムについて。
 彼のあざといビジュアル・エフェクトは率直に言っていまいちとしか言いようがない。彼の視覚的快楽中心主義は徹底しており、おもしろければ何でもありと言わんばかりの演出一本やりは退屈だ。スター・ウォーズダース・ベーダールーク・スカイウォーカーの戦い、男性が女性の腹を殴りつけるCGなど、リズムに合わせてノリ一発の映像が次から次へとステージ上を流れていく。
 一番特徴的なのはヒトラーの演説の映像だ。ステージ上に映写された巨大なヒトラーの演説。会場にいる観客たちは大喜びで盛り上がっている。もちろんこれはナチスの集会をこの場に召喚しているのであって、この会場がまさにナチスの集会を反復している。ヒトラーに熱狂する観客。
 誤解のないように断っておくが、カニングハムに政治的意図などありはしないだろうし、ナチズムそのもののこの場での反復が危険だなどと言いたいわけでもない。そのモチーフの是非などに僕は興味がない。
 僕が気に入らないのは、あくまでも盛り上がるネタとしてしかヒトラーの演説を取り上げていない点であって、要するに彼にとってはヒトラーダースベーダーも等価値な素材に他ならない点にある。
 つまり、彼の映像作品が退屈なのは、そこに異様な突出の瞬間が何ひとつなく、すべてがひとしなみにネタであるにすぎないからだ。おそらく彼の目はあらゆる映像を視覚的なインパクトのグラデーションでしか捉えることができず、そしてすべてがインパクトのグラデーションである限りにおいて、どれもこれもノリの強弱の問題に過ぎない。
 だが、これは視覚的なものをあまりにも単純化して捉えている。彼にできるのは次から次へと過激な映像を漁りつづけることだけであって、そのサディズム的単調さそのものの論理が今後も繰り広げられていくのだろう。やれやれ。