シルヴィ・ギエム・オン・ステージ2005 @ 愛知県芸術ホール 2005/11/30/Wed.

 東京バレエ団の公演は置いておいて、やはり注目はギエムの「TWO」と「ボレロ」に他ならない。
 ラッセル・マリファント振付の「TWO」は強烈な印象を残す小品だ。天井からギエムを取り囲むように、彼女のまわりだけに照明が当てられている。タイトル通りの2m四方のみの空間。その他は暗闇だ。ギエムはほとんどその場を動かずに踊り続けるのだが、彼女の隙のない高速な動きは網膜に残像を作り出し、あたかも完成度の高い3DのCGを見ているかのように、デジタルな映像としてダンスが繰り広げられていく。円の動き。楕円の動き。僕らの知覚は明らかに、質感の異なる何かの感触を捉えている。
 ご存知モーリス・ベジャールの「ボレロ」はギエムの代表作でもあるのだが、今回の日本ツアーで彼女のボレロは見納めとなる。ベジャールの「ボレロ」と言えば、パトリック・デュポンやジョルジュ・ドンなどが有名だが、ギエムの「ボレロ」は彼らと比べても圧倒的な完成度を誇り、そして徹底的にクールだ。ギエムの一糸乱れぬ完璧に統制されたメカニカル・ダンスは、情熱的に熱く踊りがちなこのダンスをあくまでも動きのひとつひとつの積み重なりへと分解する。
 ベジャールの「ボレロ」は、真ん中で踊るメロディとそれを取り囲む群舞のリズムとで構成される。ジョルジュ・ドンのメロディと男性群舞のリズムとによる同性愛的欲望の圧倒的な強度も圧巻だが、ギエムの天才はひたすら自らの物理的な身体の動きただそれだけへと視線を釘付ける。これで見納めなのが残念だ。