ピクシーズ @ ZEPP NAGOYA 2005/11/09/Fri.

 昨年のフジロックに続き、2回目の生ピクシーズ。率直に言って、フジよりもすばらしかった。「ボーン・マシーン」「モンキー・ゴーン・トゥ・ヘヴン」「アイ・ブリード」「ヴェロウリア」などなど、バカノリの曲目白押し。
 丸々と太ったボーカル、フランク・ブラック(ブラック・フランシス)はマジで太く、横姿など巨大なボールのようだ。ピクシーズに比べれば、サンボマスターなどまだまだ甘い。そう、ピクシーズが素晴らしいのは彼らが「内面的な苦悩」などとは全く無縁であり、ひたすらロックの音楽にのみ奉仕している爽快さにある。こういうライヴを見ると、しばらくロックから離れていたことを残念に思う。ピクシーズがいなければ、ニルヴァーナも存在しなかったのだ。
 確かにピクシーズは確かにルックスで損をしているかもしれない。スキンヘッドの太ったボーカルでは、カート・コバーンエディ・ヴェダーのようなカリスマ性を纏うことはできない。だが、カートのような内面性をフランクに期待するほうがどうかしている。繰り返すが、内面の物語などではなく、音楽に関心があるものにとっては、ピクシーズこそはジャングルの奥に生息する聖なる巨象だ。巨象に内面などありはしない。
 ベースのキム・ディールも人気が高い。僕はピクシーズ解散後のキム・ディールのバンド、ブリーダーズも大好きだったのだが、ブリーダーズにあった叫びはなくなり、ひたすら穏やかにしっとりとしたボーカルを聴かせる。
 個人的に最も好きなのは、やはり「ブロークン・フェイス」だ。ひっくり返った高音で「アイ・ガット・ア・ブロークン・フェース! アハ、アハ、アハ、アハ、オー」と歌われるアレだ(笑)。見ようによっては、確かに間抜けな感じはある。だが、かっこよさなどに囚われず、ひたすらロック/ポップな音楽性にこそ奉仕するこういう姿こそが、僕らをひきつけてやまない彼らの魅力だ。巨象はどこへ歩んでいくのだろうか。自分たちにすら分からないに違いない。