デヴィッド・ラシャペル / ライズ

 「<全米で最も危険>と言われる地区L.A.サウス・セントラル」を舞台に繰り広げられているクランプ・ダンスを題材にしたドキュメンタリー。僕はクランプ・ダンスなるものを知らなかったのだけれど、「ブレイク・ダンス以降に登場したヒップホップ・ダンスのなかで最も重要なムーブメント」なのだとか。
 クランプ・ダンスとはヒップホップに合わせて、体を力の限り激しく高速に振動させるダンスだ。映画の冒頭に「この映画の中のダンスは早回しではありません」との字幕が入る通り、痙攣するかのように腰を、腕を振り回し続ける。
 この映画には、全体を貫く骨組みとして、クランプ・ダンスの生みの親トミー・ザ・クラウンは若者たちにこのダンスを教えることで、多くの若者たちにギャング以外の生き方を提示し、生きる希望を与えているというストーリーがあるのだが、しかしなんと言っても最大の見所はクランプ・ダンスそのものにほかならない。
 しかし、ブレイクダンスが体の動きに制限をかけ、不自然で複雑な運動を繰り出すことで強烈なインパクトを与えていたことと比較すれば、クランプ・ダンスは身体の内側の原初的な衝動をそのままただ力強く表出するかのような動きであるため、どうしても単調な印象を拭うことができない。足捌きに特徴がないこともその印象を強めている。
 クランプ・ダンスはほとんどマッチョな身体賛歌であるとさえ言えそうな気がする。ただし、創始者トミー・ザ・クラウン自身はあくまでもクラウン(ピエロ)として人を笑わせることを仕事にしており、また体形もぼてっと太っているのだから、そう簡単に断言はできない。しかし、なぜかトミー自身が踊るシーンはほとんど欠落しているのだ。僕はトミーのダンスこそが見てみたい。
 
『ライズ』オフィシャルサイト
http://www.rize-movie.jp/
トミー・ザ・クラウン・オフィシャル・サイト
http://www.tommytheclown.com/