スパイク・リー / インサイド・マン

 「社会派」スパイク・リーによる娯楽映画。これぐらいの出来栄えであれば、金を払って劇場で見る価値はある。
 物語の題材は銀行強盗。銀行強盗のリーダーを演じるのはクライブ・オーエン。銀行に立てこもった4人の強盗団と交渉する警官がデンゼル・ワシントン。だが、これは単なる銀行強盗ではなく、その銀行を狙われたことには銀行の会長クリストファー・プラマーのある秘密と関係があったという設定。プラマーは保身のために、銀行強盗との交渉役に野心家のやり手弁護士ジョディ・フォスターを雇う。ちなみに、警察の現場責任者はウィレム・デフォーなのだが、彼にはあまり見せ場がない。
 率直に言って、銀行会長の秘密はベタだし、強盗の動機もいまいちではある。だが、冗長になりがちな物語を銀行強盗、警察、銀行会長&弁護士の3者の立場から構成することで、飽きずに最後まで見ることができる。この映画を見ていると、もしかするとスパイク・リーという監督は今後大化けして、傑作を撮る可能性さえあるかもしれないと思う(ちなみに、僕は彼のこれまでの作品は評価が高すぎるほどには凄いと思わない)。
 もしかすると、この文章を読んだ人はあまり褒めているように読めないかもしれない。
 まぁ率直に言うと、もっと時間を短くして、全体的にスリムにしたほうが良かったとは思う。だが、こけおどしに陥らず、演出に注力している点は非常に好感が持てし、事実、効果を上げている。クリストファー・プラマーは悪くないし(彼は何と言っても顔が良い)、マスクを被ってほとんど顔を出さないクライブ・オーエンはかなりがんばっている。一方、デンゼル・ワシントンは下々の人間を演じさせるとあまりうまいとは言えないし、ジョディ・フォスターも金のためなら何でもやる野心家弁護士という役柄をステレオタイプなヤッピーとしてしか演じられていないのだけれど、まぁ高望みをするものではない。
 
インサイド・マン公式サイト
http://www.insideman.jp/