大島司 / シュート

 多くの漫画好きにとっては言わずもがなの話だが、最高のサッカー漫画は『キャプテン翼』ではなく、大島司の『シュート』だ。後世の漫画史家(?)はこの点を決して誤解すべきではない。
 天才・久保嘉晴が作りあげた掛川高校サッカー部が久保の遺志を継ぎ、ミラクルチームと呼ばれるまでに成長していく漫画なのだが、なんと言っても見所はトータルフットと呼ばれる掛高の波状攻撃だ。勢いに乗った掛高のメンバーたちが次々と怒涛のオーバーラップを仕掛け、敵チームを圧倒していく際の描写がすばらしい。『キャプテン翼』とは異なり、大島司はクローズアップ気味の絵を主体にコマを構成しており、圧倒的な躍動感を生み出していく。
 そして、極めつけは主人公・田仲俊彦の幻の左と言われる脅威のシュートだ。と言うよりも、このシュートを見事に決めた直後の、腕を天に向かって突き上げる勝利の一瞬。この瞬間を大島は、地面すれすれのローポジションから仰角気味に、画面がゆがむほどにデフォルメして捉えることで、田仲の身体を貫く歓喜の力動を見事に画の中に描き出している。読者も否応なしに、その歓喜のなかに取り込まれる。
 

大人買い…

 名古屋で大きな本屋と言えば、名古屋駅では三省堂書店(テルミナ店とジェイアール名古屋高島屋店)、ジュンク堂書店書店(名古屋店)、星野書店(近鉄パッセ店)であり、栄ではマナハウス、丸善(名古屋栄店)、紀伊国屋書店(ロフト名古屋店)、旭屋書店(名古屋ラシック店)、パルコブックセンター(名古屋パルコ店)だ。
 名古屋駅では三省堂テルミナ店のアクセスが良いので一番よく行き、ジュンク堂は品揃えで行くという感じ。星野書店は近鉄パッセ内のタワーレコードに行った帰りにしか寄らない。
 栄では最近できた旭屋書店が一番よく行き、次がマナハウスであり、丸善だ。パルコブックセンターはパルコ内のタワーレコードに行くときぐらいしか寄らない。
 というような話はどうでもよくて、マナハウス4階のCD屋が閉店するために現在20%以上オフの閉店セールをしており、ついつい大人買いをしてしまったのだ…。
 お買い上げ品:ジャン=リュック・ゴダール『愛の世紀』豪華DVD BOXセット(30%オフ)、同じくゴダール『恋人のいる時間』IENA限定エディション(30%オフ)、ジョン・カーペンター『DVDコレクターズBOX』完全限定生産5000セット(50%オフ)、ベック『グエロ』デラックス・エディション(30%オフ)。ざっと2万円ぐらい…。
 

グエロ (初回限定盤DVD付)

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サンボマスター / サンボマスターは君に語りかける

 TV版『電車男』の主題歌にも抜擢されるなど、最近、大ブレイク中のサンボマスターだが、アルバムを聴いてみても基本的な感想は2005年4月24日のエントリとまったく変わらない。
 Voの山口隆は声量はないし、声質もロック向きとはとても言えまい。彼らの楽器は決してひどいと言うわけではないが、圧巻の演奏とはいかない。では、彼らの強みは何なのか? 答えはただひとつ「熱さ」だ。ロックが初期衝動一発の素人音楽だとするならば、サンボマスターはまさにロックの本質に触れていると言えなくもない。要するに、表現主義的に自らの愚直なまでの思いを絶叫してみるということ。しかも、サンボマスターは万人に合唱可能なやり方でそうしている。
 90年代に観客の合唱をロックに取り戻すことで驚異の成功を収めたのはオアシスだが、サンボマスターをもって日本にもついにオアシスが登場したのだと言えるのかもしれない(ブームに乗って当時あれこれと日本に登場したオアシス・フォロアーたちは論外)。そう、熱い合唱系ロック・ミュージシャンというのは意外に日本に欠けていたのかもしれない。サンボマスターのライブにおいて、観客達が我を忘れながら絶唱している姿は目に浮かぶようだ。
 だが、僕はどうしても彼らの音楽に対してそこまで無条件に熱くなれない。決して嫌いな音楽ではない。だが、それほど凄いとは思えないのだ。そのためやはり、前回のエントリと同じ結論になってしまう。渋谷陽一などの年配のロック好きたちがサンボマスターにコロッと参ってしまうのは、分かるようでやはり分からない。
 とりあえず再来週のフジロックでは彼らのライヴを見てきたいとは思う。そのぐらいに気になるバンドではあるのだ…。