いま聴いている音楽  スウェード

suede / dog man star
解散してしまったスウェードのセカンド。スウェードは基本的にどれも好きなのだが、もっとも好きなのはこのセカンドかファースト。一番グッと来るのは2曲目"WE ARE THE PIGS"。俺たちは豚だ。確かにあまりにも愚直すぎて馬鹿っぽい言葉ではあるかもしれない。だが、若者特有の無力感と倦怠感が入り混じった絶望を、ブレット・アンダーソンの艶っぽくもグラムな歌声とバーナード・バトラーのうねるようなギターが絡み合い描き出す*1。そして、この絶望がいかにも魅力的なのだ。「嘘偽りなんかじゃ誰も救えやしないから、俺たちはただやつらが火達磨になっているのを見つめるだけしかできないんだ…」おそらくは自分でも何を歌っているのかよく分かっていないんじゃないかと思われる混乱ぶりにクラクラ。
3曲目"HEROINE"もすばらしい。ヒロイン? だが、英語ではヒロインとヘロインの発音は同じであるため、ブレットが歌うと単に薬中の歌にしか聴こえない。「僕はヒロイン(ヘロイン)に首ったけ。死にたくなるほど何時間も何時間も…」ドラッグにおぼれていた頃のブレットによる、掛け値なしにストレートでピュアなラブソング。身もだえするような激情。
SM、ドラッグ、レイプ、近親相姦、同性愛など倒錯的な歌を全面的に炸裂させて登場したファーストもしびれたが、このセカンドも倒錯度合いでは負けていない。この時期のスウェードが多くの人々に支持されていたのは、この手の感情が実のところ誰にでも身に覚えのあるものであるからにほかならない。自分のなかに潜む倒錯的な情動に気づいてしまった人、振り払おうとしても振り払えない人にお勧め(笑)。

*1:このアルバムの後、バーナード・バトラーは突然スウェードを脱退する。そう言えば、バトラーはあんなにもブレットを批判していたにもかかわらず、最近この二人は共同でアルバム制作をしている。非常に楽しみだ