MoMA ニューヨーク近代美術館展「モダンってなに?」@森美術館

実はジャン・グエン=ハツシバ展について書きたかったのだが、長くなるので今日はMoMA展に触れて終わりに。と言っても、実は時間がなかったのでMoMA展はぜんぜんちゃんと見ていない。また、今度ゆっくりと見るので、そのときに書きます。って、これではMoMA展にぜんぜん触れていない(笑)。
ざっと歩いていくなかで目に付いたローリー・アンダーソンの1986年の《私たちが、ってどういうこと?》を見た。これは20分程度の映像作品。彼女の知的センスは感じられるものの、作り自体は「たいして笑えない寸劇」といった感じで、いかにも低予算なTVのバラエティ番組的な作品。アートと言えるかどうかは微妙だと思う(笑)。
ローリー・アンダーソンについては、2004年5月30日の日記でも簡単に触れたが、大好きなミュージシャンだ。この作品が作られたのは早いもので既に20年近く前になる(なんか年寄りくさいな:笑)。この頃のローリー・アンダーソンは「マルチメディアを駆使するトータル・パフォーマー」、あるいは「電子テクノロジー時代の歌姫」というようなイメージで、先端的なカルチャー好きの若者たちのあいだではかなりの人気を誇っていた。この作品の彼女はテクノロジーを用いつつもあえてかっこよさから距離を置いているが、少し間の抜けた作品にしてしまうこの恥じらい(?)は、何となくこの時代の雰囲気を醸し出しているように思われる。
この作品はローリー・アンダーソンのインタビューで始まる。彼女はツアーに作品作りにマスコミ対応にと忙しいため、クローンを作り出したというとぼけた設定だ。クローンのローリーももちろんローリー自身が演じているのだが、背丈はエフェクトで小さく圧縮されており、顔には髭をつけ、声はボコーダーで男性声に変えている。ボコーダーで声を多様に変化させるのは彼女の得意技であり、ファンにはお馴染みだ。新聞を読んでいるローリーの傍らでクローンのローリーが作曲をするシーンが作品半ばにあるのだが、このシークエンスは感動的だ。ここで作曲されている静かな曲は"THE DREAM BEFORE"。89年のアルバム『STRNGE ANGELS』に収録されている名曲だ。アルバムではローリーが普通の女性声で歌っているのだが、この作品内では男性声のローリーによって見事に歌われている。やはり彼女はミュージシャンだと思う。音楽が流れると、心が奪われてしまう。その曲にあわせて、見るからに作り物のクローン・ローリーやCGっぽい部屋のあれこれがゆっくりと映されていく。複製技術時代の芸術作品? そう、この曲はベンヤミンに捧げられているのだ。