季刊『前夜』創刊号(影書房)

書店で見つけた新雑誌『前夜』を購入。創刊号の特集は「文化と抵抗」とあるだけあって、基本的にはカルチュラル・スタディーズ系の雑誌。NPO前夜が発行。メモ代わりに記載。
まずは高橋哲哉インタビュー。僕は法学についてはほとんど何も知らないのだが、欧米で80年代に出てきたポストモダン法学(!?)という流れがあるらしい。

法はたとえ自然法であっても、自然法としてそれを認識する人間の解釈によって構成、構築(コンストラクト)されたものであり、必ず何らかの世界観やイデオロギーの反映である。それは決して中立的なものでも絶対的なものでもなく、また最終根拠とはなりえないので、政治的な批判の対象となりうる、と主張する。

デリダもこの流れを見ながら、『法の力』(堅田研一訳、法政大学出版局、1999年)をはじめとする議論を出してきました。法は常に脱構築可能だけれども、それが脱構築可能なのは、法とは別次元の「ジャスティス」があるからだ、と。法を超えた「ジャスティス」があるからこそ法は脱構築されうる。しかし、他方で、「ジャスティス」は、現実に法のなかに具体化されないかぎり「力」をもつことができない。この両面を肯定することですね。

この「法とは別次元の『ジャスティス』」というのがよく分からない。何によってそれが「ジャスティス」であると保障しうるのだろうか。やはり『法の力』を読むことにしよう。
ジャック・デリダのインタビューは、「米国の新世紀のためのプロジェクト」(PNAC*1をターゲットに据えた、イラク侵攻に関する民衆法廷ブラッセルズ法廷」を巡るもの。この法廷に共感したデリダの提案は非常に明快であり、現実主義的な提案を行っている。が、最後に触れられる「メシアニズムなきメシア性」というのはよく分からない。あらゆる宗教的なものから独立し、平和と正義を、来るべきデモクラシーを待ち望むことというような意味合いだと思うが、いわゆる平和への祈りなどとどこまで違うと言えるのだろうか?

*1:ブッシュ政権の戦争の論理を支える新保守主義シンクタンク。「この圧力団体のプログラムは、ハイテク兵器を用いた地球規模の覇権構築を推進すること、競争相手となりうる超大国の登場を阻止すること、米国の利益を脅かすあらゆる者たちを封じ込める予防行動を遂行すること、である」らしいトンデモナイ団体。『ネオコンの論理』のロバート・ケーガンはこのPNACの思想的支柱。