カエターノ・ヴェローゾ / プレンダ・ミーニャ

 ライヴ以来、カエターノのCDばかりを聴いている。だからという訳でもないのだが、ライヴアルバムをよく聴き返していて、2005年2月23日のエントリに書いた『フェリーニへのオマージュ』と並んで『プレンダ・ミーニャ』もよく聴いている。傑作『リーブロ(書物)』、著作『ヴェルターヂ・トロピカル(トロピカリズモの真実)』に続く3部作の完結編とされているライヴアルバムだ。
 先日のライヴでも演奏された「テハ」も収録されている。「テハ」はやはり何度聴いてもすばらしい。既に発表されてから20年ほど経っているにもかかわらず、今の時代でもこの美しさは圧倒的だ。「テハ」とは「テラ」、つまり地球のことだ。

牢獄の独房につながれていた時
僕は生まれて初めて見た
おまえの写真を
おまえの全身が写っている
でも裸じゃなかった
雲に覆われていたからね
 
地球 地球よ
おまえがどれほど遠い存在であれ
どれほど過ち多き旅人であれ
おまえを忘れることは決してないだろう

 知られるように、カエターノは60年代後半に軍事政権によって投獄され、釈放後も2年以上に及ぶイギリスでの亡命生活を余儀なくされた。だが、牢獄での体験がこれほどまでに優しく美しい歌に結晶するなんて奇跡的だと言っていい。パーカッションのリズムに続き、カエターノが語りかけるようにゆっくりと歌い始め、様々な楽器が更にかぶさっていく。宇宙空間のなかにぽっかりと地球が浮かぶように、カエターノの歌声が宙に、意識のなかに浮遊し、そして雄大な大河そのもののようにゆっくりと流れ始める。極上のひと時。これからこの曲を生で聴けるであろう東京公演参加者たちが羨ましい。
 このアルバムの聴きどころはもちろんこの曲に限らないのだけれど、カエターノの音楽をライヴから距離を置いて聴くにはまだもう少し時間が必要なようだ。
 

Prenda Minha

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