現実的な国際貢献?

 
 ●吉田鈴香『アマチュアイラクに入るな』(亜紀書房
 ●伊勢崎賢治武装解除』(講談社現代新書
 
 前者は「プロのNGO」がどのように危険地域で活動しているのかに関する分かりやすい概説書。平和構築の現場においても、ビジネス書におけるコンサル会社風フレームワークに基づいた活動がなされていることは少し意外だったが、フレームワークのおかげで分かりやすい解説にはなっており、リーダビリティは高く、理解も容易だ。イラクに行こうなどと思っている人は一読すべし。安全を確保するために、そして成果を挙げるために、どれだけの周到な準備と高度な能力が必要なのかがよく分かる。だが、こうしたフレームワークを身につけていない者には国際貢献などできはしないと決め付けているかのように読める点については、言いたいことは理解できるものの引っかかることは事実だ。要するに、本書においては国際政治もビジネスの同等物にほかならず、平和構築のMBAを取得していないものは現地に行っても使い物にならないという主張がなされている。だが、こうした認識はおそらく正しいのだ。国際紛争解決のスキルやノウハウを蓄積し、最大のリターンを求めていくことが重要だという議論を誰が否定できるだろう?
 後者は世界各国で武装解除を指揮してきた人による国際政治の現場に関するリアルなレポート。東チモールにおいて暫定政府の県知事となった時の話、西アフリカのシエラレオネやアフガンで武装解除を指揮した時の話など、とても興味深い。当然のことだが、ゲリラの武装解除など簡単なことではなく、すべてが手探り状態でなされていることがよく分かる。『アマチュア…』で概論を押さえた人は、各論として本書を読むこともお勧め。泥臭い駆け引きや利害関係の現場の一端を窺うことができる。

フランスのレニクラによる情感溢れるアルバム

 
 ●テテ / ア・ラ・ファヴール・ドゥ・ロートン
 
 フランスのレニクラことテテの2ndアルバム。特に熱唱したり、高音を張り上げたりするわけではない自然体の歌声が、メロウな美メロとともに情感溢れる厚みをもって迫ってくる最高の黒人フォークロック。言葉を口にすれば、それがそのまま歌になっているんじゃないかと思わせるような天性ボーカリスト系。声質はコールドプレイのクリスに少し似ている。
 歌詞のバリエーションも広い。インスピレーションと状況に基づいて立ちションをして武装警官に捕まる歌(笑)とか、往復ビンタの歌(これほど血の流れをよくするものがあるだろうか、これは清浄な電波のように元気を回復させる、これは即席の禅であり気分を爽快にさせる、などと歌われる:笑)などのユニークな歌詞。あるいは、アルバムタイトル曲(秋がやってきたから、この甘美なメランコリーも再びやってくる)や「時代は変わる」(白状しろよ、左翼同士だったらお互い理解しあえるなんて、甘すぎることを考えていたんだろう)、「モンレアル」(オレンジ色と紅色の中間にあるモンレアルの秋、あるいは無)などのメランコリックな歌詞も印象的だ。そして、こうした人生の様々な断片をテテが歌うと、すべてが少しセピア色がかったスナップショットのように懐かしく見えてくるのだ。聴き出すとかなり病み付きになる魅力的な音楽だ。
 3月に初来日公演が予定されているのだが、このアルバムを聴いて、絶対に行こうと思った。2月には来日記念盤として1stアルバムも日本版が発売される。

大量消費

 今日は休日出勤を癒すためにCDを4枚も購入。1枚が上記のテテ。残りは次の3枚。
 
 ●バンド・エイド20 / ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス
 
 ナイジェル・ゴドリッチによるプロデュースの現代版ドゥ・ゼイ・ノウ。やっぱり曲がダメダメなのは如何ともしがたく、一回だけしか聴けなかった。あぁ、無駄買い…。ちなみに上記のテテで触れたコールドプレイのクリスから始まっていた。しかし、レディオヘッドのメンバーはどこで歌ってるんだ? 探すために聴き返そうとも思わないけれど。
 
 ●ラシッド・タハ / テキトハ
 
 アラブロックの実力者タハの新譜。クラッシュの名曲「ロック・ザ・カスバ」のカバーも収録。未聴。今年のフジロックに来てほしいミュージシャンの一人。
 
 ●ブラッド・メルドー / ソングス:アート・オブ・ザ・トリオ Vol.3
 
 超絶ピアニスト・メルドーの98年のアルバム。リーダー4作目。メルドーは2月に来日公演あり。もちろん既にチケットはゲット。未聴。