ユーモア・ミステリーの佳作

 
 ●ドナルド・E・ウェストレイク『我輩はカモである』(ハヤカワ・ミステリ文庫)
 
 ドートマンダー・シリーズに代表されるウェストレイクのユーモアミステリー群は大好きだ。この本もなかなかよろし。見知らぬ叔父から莫大な遺産相続された主人公。この主人公がまた天性のカモであり、これまで何人の詐欺師にも騙され続けているのだ(笑)。さて、たいへん。次から次へと妙な登場人物が登場し、ついには命まで狙われるのだ。
 ま、『嘘じゃないんだ』(ハヤカワ・ミステリアスプレス文庫)ほどの傑作とは思わないけれど、この天性のカモがむやみに人を信じる天真爛漫さと、あらゆる人を疑い始める疑心暗鬼とのあいだの振幅のブレが大きく、心理描写などなかなか笑えます。
 ところで、僕には非常によくあることなのだが、この本も半分くらい読んでから、過去に読んだことがあることを思い出した。誰が殺人犯なのかも。最後まで読んだら、やっぱり当たっていた。やれやれ。