書籍

上遠野浩平 / ロスト・メビウス ブギーポップ・バウンディング

一冊目がこれ。なんだかんだ言って、上遠野浩平のブギーポップシリーズはだいたい読んでいるのだが、正直言ってさほどおもしろいと思えない。じゃあ、何で読んでるんだと言われると困るのだが、以前にどういう気まぐれかは忘れたが(たぶん流行っているとか…

北村薫 / ニッポン硬貨の謎

北村薫の<円紫さんと私>シリーズは大好きで、『空飛ぶ馬』を初めて読んだ時の喜びは今でも覚えている。 言うまでもなく、現在においては密室殺人などの不可能犯罪にはリアリティがなくなりつつある。近代化が進展し幻想文学が成立しえなくなった時代におい…

廣末好彦 / リクルート式燃える営業マンの作り方

リクルートという企業が組織運営に心理学を活用している点を中心に記述した本。だが、電話一本で社長にまでつないでもらう手法など、営業に関する細かなノウハウを方法化して実践しているリクルートはやはり普通ではない企業だ。 一番驚いたのはフィードバッ…

今村英明 / 法人営業「力」を鍛える

営業スタッフ個人の能力向上に関する書籍は書店に山積みされているが、組織としての営業力を向上させるための書籍は意外に数が少ない。本書はこの組織としての営業力、なかでも対一般消費者ではなく、法人向け営業力に絞って法人営業力を鍛えるための全体像…

川島蓉子 / 伊勢丹な人々

『ビームス戦略』の著者による伊勢丹賛歌。新宿伊勢丹の店内セレクトショップ「解放区」「リ・スタイル」「BPQC」にリニューアルしたメンズ館の各売場に対する分析、というか感想を中心に、伊勢丹のすばらしさを讃えてみせる。 確かに新宿伊勢丹は驚異的な店…

中島岳志 / 中村屋のボース

ラース・ビハーリー・ボースの名前を知っている人は少ない。僕自身も本書を読むまでまったく知らなかった。 R・B・ボースは20世紀初頭のイギリスの植民地統治下のインドにおいて急進的独立運動の指導者だった。とりわけ彼の名前を有名にしたのが当時のインド…

東渕則之 / 建設会社でも二ケタ成長はできる!

構造不況業種といわれる建設業において過去十数年にわたって二ケタ成長を続ける脅威の企業が愛媛県に存在している。本書はその企業ジョー・コーポレーションの躍進の理由を平易に解説した本だ。内容は、社長、経営理念・ビジョン、ビジネスモデル、システム…

ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会 / 思考停止企業

架空企業の営業力強化の取り組みの物語だが、著者がジャストシステムが音頭を取る協議会だけあって、落としどころナレッジマネジメントの導入になっていることは仕方がない。 だが、それを割り引いて考えても、ナレッジマネジメント導入に関する課題が分かり…

柄谷行人 / 革命と反復 序説 (『クォータリーat 0号』太田出版)

柄谷行人による『トランスクリティーク』以降の新展開を告げる連載とのことだが、まだ連載第一回とのこともあり、とりあえず様子見というところ。とりあえず次号も引き続き読む。 柄谷行人は80年代後半に60年周期の歴史の反復を考えていた。その内容をざっく…

佐藤優 / 中国と田中均 日本外交の罠(『文藝春秋』2005年6月号)

2005年5月5日のエントリ、10日のエントリに続いて、佐藤優ネタ。この文章はタイトルが示す通り中国問題をテーマにしており、内容は5月10日のエントリと重なるが、対談でない分、こちらのほうが内容は詳しい。 相変わらず様々に披露される外交のロジックや外…

佐藤優・福田和也 / 瀬戸際の日本外交 (月刊『現代』2005年6月号収録)

2005年5月5日のエントリで取り上げた佐藤優の対談。やはり彼の分析は抜群に面白い。中国の情勢分析、対中外交のあり方、潰された外務省国際情報部の必要性、あるべき外務官僚の姿、外務省動向の読み方(外務省が国内向けのポーズとして強行発言をしているか…

柴崎友香 / フルタイムライフ

この小説を読んで、柴崎友香の作品をこれまで読んでこなかったことの不明を恥じた。彼女はなかなかの才能の持ち主だと思う。丁寧に紡ぎあげられた文章は読みやすくも安易に内容を伝達するだけではなく、文章を読むことそのものの方に誘いかけてくる。 タイト…

佐藤優 / 国家の罠

近年稀に見るノンフィクションの傑作。概要については下記の青木昌彦の書評を参照されたいが、鈴木宗男を吊り上げるために検察によって犯罪者に仕立て上げられた元外務官僚本人(鈴木宗男に仕える外務省のラスプーチンと呼ばれた男)による迫真のドキュメン…

意外に読まれていない少女小説?

女性の友人と昔読んだ小説の話になったりしたときなどに、以前から気になっていたのだが、少女小説は意外に読まれていないような気がする。 ここでいう少女小説は別に吉屋信子や大林清などのことではない。いくらなんでもこれらの小説が読まれていないことは…

山田真哉 / 女子大生会計士の事件簿DX.1、DX.2

昨日エントリーした『さおだけ屋』と同じ著者による小説。あっという間に2冊読めてしまうぐらいに内容は軽い。 著者自身DX.1のあとがきで文芸書ではなくビジネス書だと述べているが、ビジネス書にしてはあまりに断片的な会計詐欺のトピックの伝達にしかなっ…

『ユリイカ』2005年4月号 特集*ブログ作法

おそらく既に多くのはてなユーザーに触れられていると思うが、仲俣暁生、栗原祐一郎、鈴木謙介、吉田アミによる対談「激突!はてな頂上作戦」を読んだ。タイトルにはほとんど意味がない。全体的に雑談的なノリ。 はてなに学者や出版関係者、ミュージシャンな…

山田真哉 / さおだけ屋はなぜ潰れないのか?

本屋で見かけて読んでみた。軽い気持ちで買ったのだが、思った以上におもしろかった。利益、連結経営、在庫と資金繰り、機会損失と決算書、回転率、キャッシュ・フロー、数字のセンスといった各テーマについて、身近な話題に即して概要を説明してくれる。 例…

山田正紀 / 神狩り2 リッパー

山田正紀が作家生活30周年記念作品として、デビュー作『神狩り』の続編を発表したので読んでみたのだが、あまりおもしろくない。物語の語り手が透明化されずに語り手としての存在感を押し出しているのは良いとしても、その語り手の過剰な思い入れに引いてし…

ミシェル・ウェルベック / 闘争領域の拡大 / 角川書店

これで邦訳3冊目となるウェルベックだが、順番で言えばこの小説が彼の処女作である。なるほど読んでみて、後の作品の傾向がすでに顕著に現れている。もてない男のルサンチマン? いや、ルサンチマンというほどの強い感情でもなく、諦めに近い苦い認識だけが…

飛浩隆/象られた力/ハヤカワ文庫

僕は実はSFファンというほどの読者ではないので、今回、飛浩隆の小説を初めて読んだのだが、思った以上におもしろかった。この短編集を読む限り、彼の小説は世界の構造についての眼差しに貫かれている。つまり、この世の中の諸現象を象っている力のありよう…

アラ・グゼリミアン編『バレンボイム/サイード 音楽と社会』(みすず書房)

結局、再読してしまった。しかし、この本はパラパラと読める割には難しく、容易には理解しがたい部分が多い。だが、次のようなバレンボイムの発言を読めば、前回の公演(2005年2月20日の日記を参照)の記憶と見事にリンクする。 まずはじめにくるのが、沈黙…

ユーモア・ミステリーの佳作

●ドナルド・E・ウェストレイク『我輩はカモである』(ハヤカワ・ミステリ文庫) ドートマンダー・シリーズに代表されるウェストレイクのユーモアミステリー群は大好きだ。この本もなかなかよろし。見知らぬ叔父から莫大な遺産相続された主人公。この主人公が…

少々冗長なプライシング解説本

●青木淳『プライシング』(ダイヤモンド社) その名のとおりプライシングに関する解説書。値付けというのはマーケティングにおいてかなり重要性の高いテーマだが、この書物が最良の解説書というわけではないな。コストに利益を上乗せするプライシングや、単…

コンサルたちの暴走

●服部隆幸『脱・片思いマーケティング』(日経BP社) なかなか面白い。帯に「本書は、大分県の印鑑屋さんがワントゥワン・マーケティングに取り組む物語」とあり、興味を惹かれて購入。印鑑屋でワントゥワンを実施して、次回の購入なんてありうるのか? 結論…

現実的な国際貢献?

●吉田鈴香『アマチュアはイラクに入るな』(亜紀書房) ●伊勢崎賢治『武装解除』(講談社現代新書) 前者は「プロのNGO」がどのように危険地域で活動しているのかに関する分かりやすい概説書。平和構築の現場においても、ビジネス書におけるコンサル会社風フ…

最近、まとめ読みしたビジネス書3

堀紘一『会社が放り出したい人 1億円積んでも欲しい人』(PHP) 堀紘一『これから5年 かしこい頭の使い方』(PHP文庫) どちらも思ったとおりおもしろくなかった。どれも同じような志の小さな処世術的エッセイ。彼は行進曲を聴くと元気が出るから、毎朝聞き…

最近、まとめ読みしたビジネス書2

山本真司『40歳からの仕事術』(新潮新書) 山本真司『30歳からの成長戦略』(PHP) 前者は思ったよりもおもしろかった。外資系コンサルティング・ファームであるA.T.カーニーのヴァイス・プレジデントによる非常に明快な仕事術。この手の本としては傑作とい…

最近、まとめ読みしたビジネス書1

堀義人『吾人の任務』(東洋経済) 堀義人『人生の座標軸』(講談社) 前者は思ったよりもおもしろかった。民間のビジネススクール、グロービスの創業者の自伝。努力しつつ夢に向かって進んでいるところが○。 後者は思ったとおりおもしろくなかった。彼の言…

いきなりの今年のベスト候補…とまではいかない

久坂部羊『破裂』(幻冬舎) 「医者は、三人殺して初めて、一人前になる」という惹句はなかなかインパクトがあって良い。内容もなかなかおもしろい。一人前の医者になる前の未熟な状態での治療のために、何人もの患者が犠牲になっているという制度的問題への…

爆笑優良企業研究

フェルディナント・ヤマグチ『恋愛投資概論』(ソフトバンク・パブリッシング) 笑える。切込隊長こと山本一郎の『投資情報のカラクリ』を購入しようとした時に、表紙の折り返し部分の広告に爆笑優良企業研究と書いてあったので、ついこっち方を購入(笑)。 …